■レポート【民法総論】







課題自体は基本的でシンプルなものでしたが、挙げるべき事項は多く、列挙するだけでかなりの文書量になりました。


どんな科目?(本科目について簡単にご紹介)


民法全体に通じる規則に関する科目です。民法のうち、通則(信義誠実の原則など)や、人、物、法律行為(意思表示など)時効などに関する条文が該当します。


課題情報(課題の概略や成績など)

1

科目

民法総論

2

課題概略

消滅時効の援用権者に関するもの

3

課題タイプ

述べなさい

4

提出形式

手書き(ワープロ不可)

5

評価

6

レポート構成

 

課題定義

説明1(課題定義内の文言 当事者)

説明2(課題定義内の文言 援用権者)

説明3(説明2の補足)

説明4(説明3の補足)

まとめ・考察

引用文献・参考文献

7

文字数制限

4000

8

本文文字数

3015

9

備考

・本課題の考え方についてのご指導や関連重要判例等のご紹介をいただきました。

・本レポートは課題に対する基本的な理解が足りていないことがわかります。

 ・改めて読んでみると、調べたことの羅列的な記載が多いという印象です。

 ・本レポートの参考文献に、司法試験の参考書が入れてしまっていますが、これからレポートを書かれる方は、実際にはいくら参考にしていても、ここで挙げるのは避けたほうがよいと思います。

 


分析(文章をまとまり毎に表形式で整理)

1
課題定義

1消滅時効の援用権者とは

民法上の時効利益の享受者のうちのひとつとして位置づけられている。

「消滅時効」と「援用権者」についてそれぞれ民法上、下記のように規定および解釈がなされている。

(1)消滅時効

一定の財産権について権利不行使であるという事実状態が一定期間継続した場合において、その権利を消滅させる制度である(167条等)

(2)援用権者

時効の法的利益の享受者のことであり、消滅時効の場合、法的効果が生じるために満たさなければならない要件のひとつに「当事者による援用がなされること(民145条)」として表現されている。

消滅時効における援用権者とはこの当事者のことを指す。

この要件が規定されているのは、時効による利益を享受するかどうかについてその利益を受けるべき者の意思に委ねるという考え方が根底にある。

2
説明1
(課題定義内の文言 当事者)

2当事者について

当事者とは具体的には誰のことを指すのであろうか。

当事者について民法145条には単に当事者が援用できるとのみ記されている。

このため援用できる権利者の具体的な範囲、つまり援用権者とはいかなる者をいうのかということが問題となる。

判例はこの点に関して「当事者とは『時効によって直接に利益を受けるべき者』(とその承継人)のことであるとしている(大判明治43.1.25民録1622頁、大判大正4.12.11民録212051頁、最判昭和42.10.27民集2182110頁ほか)。」*注1

ここから更に「時効によって直接に利益を受けるべきもの」とは誰のことなのかが問題となるが、その判断は主に判例に基づいている。

消滅時効の場合、判例は権利の制限免除者もしくは義務免除者のみ(大判明治43.1.25)と以前はかなり限定した形で解釈されていた。

しかし、近年、学説などから次第にこの範囲が拡大されつつある。理由は時効制度の趣旨解釈による。時効制度はその効果を当事者の援用を必要とすることにより、個人の意思を尊重しているといえる。

それならば、関係する者に広く援用及び放棄の自由を認めることにより生じる効果が結果的に時効制度の趣旨に合うのではないかという考え方である。

ここから、現在では先に述べた者に加え、義務消滅に基づいて義務を免れるものという間接的に利益を受ける者も含むとされるようになってきている。

3
説明2(課題定義内の文言 援用権者)

3援用権者として認められた者

援用権者として認められた者の例としては以下のようなものがある。
(1)   保証人や連帯保証人

保証人や連帯保証人の債務は、主債務が消滅したときに付随性により消滅することから援用権者として認められている(大判昭和810.13)。

また、連帯債務者の一人について消滅時効が完成すると、完成した分については他の連帯債務者も債務を免れる(民439条)ことになるため、一人の時効完成部分については他の連帯債務者も援用を可能にすることとなる。

(2)  物上保証人

被担保債権の消滅による利益を直接受ける者である。

このため被担保債権について消滅時効を援用できるとされている(最判昭和42.10.27)。

(3) 抵当不動産の第三取得者

判例では、かつては抵当権についての被担保債権の消滅により、間接的に利益を受けるにすぎないとしてその消滅時効を援用できないとしていた(大判43.1.25等)。

のちに直接利益を受けるものに含まれるとされ、現在では時効援用を認めている(最判昭和48.12.14)。

(4)  再売買予約の目的不動産の買主からの譲受人

  再売買の予約がなされ、仮登記がされた不動産についての第三取得者が直接利益を受ける者に当たるかどうかが問題とされる。

判例は、以前は直接利益を受けるものと認めていなかった(大判昭和9.5.2)。

しかし、この第三取得者は、予約完結権が行使されると仮登記の順位保全功により最終的には所有権移転登記を抹消される関係にある一方で、予約完結権が消滅すれば所有権を全うすることができる地位にある。

このことから、予約完結権の消滅によって直接利益を受けるものに当たるとして消滅時効の援用を現在では認めている(最判平4.3.19)。

(5)   詐害行為取消権における受益者

詐害行為(424)の受益者取消権者の被担保債権の消滅時効の援用が可能かどうかについて問題とされていた。

以前の判例(大判昭和3.11.8)はこれを可能と認めていなかったが、その後学説による批判等を受け入れ、現在では認めるに至っている(最判平成10.6.22)

(6)     債務者の一般債権者による援用権の代位行使

債務者に対する債権者が他の一般債権者も存在した場合に、この一般債権者が債権者の債務者に対する債権の消滅時効を援用できるのかということが問題となる。

判例では援用の意思は債務者の自由であることから、基本的には援用はできないとしている(大判大正8.7.4)

しかし、債務者が無資力であった場合等は、援用権不行使が一般債権者を害することとなるため、債権保全の必要性がでてくる。このような場合については必要な限度で債権者代位権(423)により援用権を代位行使できるという立場をとっている(最判昭和43.9.26)

4
説明3(説明2の補足)

4 援用の方法等

 援用権者が実際に消滅時効の援用をするにあたり、その方法等についても学説や判例によりいくつか分かれている。

(1)援用の場所と時期

援用の場所について、裁判上でなされなくてはならないとする訴訟法説と裁判外でもできるとする実体法説とに分かれているが、援用時期については、裁判上での場合は事実審の口頭弁論終結時までということでほぼ一致している。

(2)援用の意思表示

  援用の意思表示については、訴訟法説によれば訴訟行為のひとつとして訴訟法上の規定を適用する。

一方、実体法説によれば、私法行為として扱い、適用されるのは民法上の諸規定とされるがどちらの説をとっても実際上の違いはほとんどない。

(3)援用の撤回

援用の撤回については、有力説では撤回を認めている。

援用の効果は相対的にのみ生じるものであるということがその理由である。

一方で、援用は法効果を確定的に生ずることから一度確定したものを撤回することによる法律関係の不安定化を防ぐため、認めるべきではないとする考え方もある。

(4)援用の相対効

  消滅時効援用に関し、複数の援用権者が存在する場合、その中の一人の援用は他の者に影響を及ぼさず(148)、これを援用の相対効という。

時効利益の享受するかどうかについては、各人の意思に委ねられるという考え方からである。

5
説明4(説明3の補足)

5消滅時効利益の放棄

 消滅時効利益の援用権者がその時効利益を享受しない旨の意思表示をすることを時効利益の放棄という。

(1)          時効完成前の放棄

時効完成前に放棄はできない(146)。完成前の時効放棄が悪用されることを防ぐためである。

(2)          時効完成後の放棄

時効完成後の放棄については認められている(146条反対解釈)

複数の援用権者が存在した場合、放棄の効力に関しては相対的にのみ生じる。

(3)          援用権の喪失

  時効完成後に、援用権者が時効の基礎事実状態を覆すような行為をすることにより、時効利益の放棄の意思表示とは関係なく、信義則上、その権利を喪失することである(最判昭和41.4.20)

6
まとめ・考察

6今後の消滅時効の援用権者について

 高度情報化社会の到来とともに人々の生活や価値観が大きく変化し、インターネットなどが関係した事件など以前にはなかった新しい問題も生まれてきている。

消滅時効の援用権者に関してもその対象や内容も時代とともに変えていかざるを得ないと思われる。

しかし、いつの時代でも大切なことは時効利益を享受すべき者が必要な利益を過不足なく確実に享受できるよう常に環境を整えていくことではないかと考えている。

7
引用文献・参考文献

(引用文献)
*注1 佐久間毅著「民法の基礎1総則第2版」有斐閣2005年 P.382 l.810
(略語)
最判・・・最高裁判所判決
大判・・・大審院判決
民録・・・大審院民事判決録
民集・・・最高裁判所民事判例集または大院院民事判例集

(参考文献)
          管野和夫 他編集「ポケット六法平成18年度版」有斐閣2005
          斉藤和夫 編「レーアブーフ民法Ⅰ総則第2版」中央経済社2004
          佐久間毅 著「民法の基礎            1総則第2版」有斐閣2005
          星野英一 他編「民法判例百選Ⅰ総則・物権 第五版」有斐閣2001
          我妻榮・有泉亨 著「コンメンタール民法総則 第3版」日本評論社2002
          川井健 著「民法入門 第4版」有斐閣 2004
          LECリーガルマインド編著「C-Book 民法Ⅰ<総則>2版」2005



文章のみ(レポートをそのまま文章のみ掲載。ざっと読みたいという方に)

1消滅時効の援用権者とは民法上の時効利益の享受者のうちのひとつとして位置づけられている。「消滅時効」と「援用権者」についてそれぞれ民法上、下記のように規定および解釈がなされている。
(1)消滅時効
一定の財産権について権利不行使であるという事実状態が一定期間継続した場合において、その権利を消滅させる制度である(167条等)
(2)援用権者
時効の法的利益の享受者のことであり、消滅時効の場合、法的効果が生じるために満たさなければならない要件のひとつに「当事者による援用がなされること(民145条)」として表現されている。消滅時効における援用権者とはこの当事者のことを指す。この要件が規定されているのは、時効による利益を享受するかどうかについてその利益を受けるべき者の意思に委ねるという考え方が根底にある。
2当事者について
当事者とは具体的には誰のことを指すのであろうか。当事者について民法145条には単に当事者が援用できるとのみ記されている。このため援用できる権利者の具体的な範囲、つまり援用権者とはいかなる者をいうのかということが問題となる。
判例はこの点に関して「当事者とは『時効によって直接に利益を受けるべき者』(とその承継人)のことであるとしている(大判明治43.1.25民録1622頁、大判大正4.12.11民録212051頁、最判昭和42.10.27民集2182110頁ほか)。」*注1
ここから更に「時効によって直接に利益を受けるべきもの」とは誰のことなのかが問題となるが、その判断は主に判例に基づいている。消滅時効の場合、判例は権利の制限免除者もしくは義務免除者のみ(大判明治43.1.25)と以前はかなり限定した形で解釈されていた。しかし、近年、学説などから次第にこの範囲が拡大されつつある。理由は時効制度の趣旨解釈による。時効制度はその効果を当事者の援用を必要とすることにより、個人の意思を尊重しているといえる。それならば、関係する者に広く援用及び放棄の自由を認めることにより生じる効果が結果的に時効制度の趣旨に合うのではないかという考え方である。ここから、現在では先に述べた者に加え、義務消滅に基づいて義務を免れるものという間接的に利益を受ける者も含むとされるようになってきている。
3援用権者として認められた者
援用権者として認められた者の例としては以下のようなものがある。
(1)保証人や連帯保証人
保証人や連帯保証人の債務は、主債務が消滅したときに付随性により消滅することから援用権者として認められている(大判昭和810.13)。また、連帯債務者の一人について消滅時効が完成すると、完成した分については他の連帯債務者も債務を免れる(民439条)ことになるため、一人の時効完成部分については他の連帯債務者も援用を可能にすることとなる。
(2)物上保証人
被担保債権の消滅による利益を直接受ける者である。このため被担保債権について消滅時効を援用できるとされている(最判昭和42.10.27)。
(3)抵当不動産の第三取得者
判例では、かつては抵当権についての被担保債権の消滅により、間接的に利益を受けるにすぎないとしてその消滅時効を援用できないとしていた(大判43.1.25等)。のちに直接利益を受けるものに含まれるとされ、現在では時効援用を認めている(最判昭和48.12.14)。
(4)再売買予約の目的不動産の買主からの譲受人
  再売買の予約がなされ、仮登記がされた不動産についての第三取得者が直接利益を受ける者に当たるかどうかが問題とされる。判例は、以前は直接利益を受けるものと認めていなかった(大判昭和9.5.2)。しかし、この第三取得者は、予約完結権が行使されると仮登記の順位保全功により最終的には所有権移転登記を抹消される関係にある一方で、予約完結権が消滅すれば所有権を全うすることができる地位にある。このことから、予約完結権の消滅によって直接利益を受けるものに当たるとして消滅時効の援用を現在では認めている(最判平4.3.19)。
(5)詐害行為取消権における受益者
詐害行為(424)の受益者取消権者の被担保債権の消滅時効の援用が可能かどうかについて問題とされていた。以前の判例(大判昭和3.11.8)はこれを可能と認めていなかったが、その後学説による批判等を受け入れ、現在では認めるに至っている(最判平成10.6.22)
(6)債務者の一般債権者による援用権の代位行使
債務者に対する債権者が他の一般債権者も存在した場合に、この一般債権者が債権者の債務者に対する債権の消滅時効を援用できるのかということが問題となる。判例では援用の意思は債務者の自由であることから、基本的には援用はできないとしている(大判大正8.7.4)。しかし、債務者が無資力であった場合等は、援用権不行使が一般債権者を害することとなるため、債権保全の必要性がでてくる。このような場合については必要な限度で債権者代位権(423)により援用権を代位行使できるという立場をとっている(最判昭和43.9.26)
援用の方法等
 援用権者が実際に消滅時効の援用をするにあたり、その方法等についても学説や判例によりいくつか分かれている。
(1)援用の場所と時期
援用の場所について、裁判上でなされなくてはならないとする訴訟法説と裁判外でもできるとする実体法説とに分かれているが、援用時期については、裁判上での場合は事実審の口頭弁論終結時までということでほぼ一致している。
(2)援用の意思表示
  援用の意思表示については、訴訟法説によれば訴訟行為のひとつとして訴訟法上の規定を適用する。一方、実体法説によれば、私法行為として扱い、適用されるのは民法上の諸規定とされるがどちらの説をとっても実際上の違いはほとんどない。
(3)援用の撤回
援用の撤回については、有力説では撤回を認めている。援用の効果は相対的にのみ生じるものであるということがその理由である。一方で、援用は法効果を確定的に生ずることから一度確定したものを撤回することによる法律関係の不安定化を防ぐため、認めるべきではないとする考え方もある。
(4)援用の相対効
  消滅時効援用に関し、複数の援用権者が存在する場合、その中の一人の援用は他の者に影響を及ぼさず(148)、これを援用の相対効という。時効利益の享受するかどうかについては、各人の意思に委ねられるという考え方からである。
5消滅時効利益の放棄
 消滅時効利益の援用権者がその時効利益を享受しない旨の意思表示をすることを時効利益の放棄という。
(1) 時効完成前の放棄
時効完成前に放棄はできない(146)。完成前の時効放棄が悪用されることを防ぐためである。
(2) 時効完成後の放棄
時効完成後の放棄については認められている(146条反対解釈)。複数の援用権者が存在した場合、放棄の効力に関しては相対的にのみ生じる。
(3) 援用権の喪失
  時効完成後に、援用権者が時効の基礎事実状態を覆すような行為をすることにより、時効利益の放棄の意思表示とは関係なく、信義則上、その権利を喪失することである(最判昭和41.4.20)
6今後の消滅時効の援用権者について
 高度情報化社会の到来とともに人々の生活や価値観が大きく変化し、インターネットなどが関係した事件など以前にはなかった新しい問題も生まれてきている。消滅時効の援用権者に関してもその対象や内容も時代とともに変えていかざるを得ないと思われる。しかし、いつの時代でも大切なことは時効利益を享受すべき者が必要な利益を過不足なく確実に享受できるよう常に環境を整えていくことではないかと考えている。
(引用文献)
*注1 佐久間毅著「民法の基礎1総則第2版」有斐閣2005年 P.382 l.810
(略語)
最判・・・最高裁判所判決
大判・・・大審院判決
民録・・・大審院民事判決録
民集・・・最高裁判所民事判例集または大院院民事判例集
(参考文献)
 管野和夫 他編集「ポケット六法平成18年度版」有斐閣2005
  斉藤和夫 編「レーアブーフ民法Ⅰ総則第2版」中央経済社2004
  佐久間毅 著「民法の基礎 1総則第2版」有斐閣2005
  星野英一 他編「民法判例百選Ⅰ総則・物権 第五版」有斐閣2001
  我妻榮・有泉亨 著「コンメンタール民法総則 第3版」日本評論社2002
  川井健 著「民法入門 第4版」有斐閣 2004
  LECリーガルマインド編著「C-Book 民法Ⅰ<総則>2版」2005