情報化と社会変動に関する課題です。近年一層注目度が高まる一方の分野ですが、レポートを書いた当時はこんな短期間にここまで私たちの生活を左右する要素になるとは思いませんでした。これからどんな方向に進んでいくのか楽しみな一方でちょっと恐ろしく感じることもあります。
どんな科目?(本科目について簡単にご紹介)
コミュニケーションを軸として、社会科学に関する総合理解をすることを目的とする科目です。政治学、社会学、心理学など他の分野とも関連が深く、幅広い分野が対象となっています。
課題情報(課題の概略や成績など)
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科目 |
新・コミュニケーション論 |
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課題概略 |
情報化と社会変動に関するもの。具体例を挙げるように指示があります。 |
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課題タイプ |
論じなさい |
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提出形式 |
ワープロ |
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評価 |
B |
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レポート構成 |
1 課題定義 2 小論1(情報社会論) 3 小論2(デジタル・ディバイド) 4 小論3(知的財産権) 5 まとめ 6 参考文献 |
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文字数制限 |
4000字 |
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本文文字数 |
3533字 |
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備考 |
・例を絞り込んだほうが説得力を増す旨のご指摘等ご指摘いただいています。 ・二つの問題から一つを選択して解答するものでした。 ・改めて読んでみると「また」という言葉が多用されていて読みにくく感じます。 |
分析(文章をまとまり毎に表形式で整理)
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課題定義
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情報化とは、社会の中のさまざまな領域において、情報の持つ重要性が高くなることをいい、その発達が物理的情報装置の変化に置かれていることに特徴がある。
ここでいう物理的情報装置とは、コミュニケーション・メディア、交通機関、また、学校や企業などの情報の生産・流通・消費活動が中心の教育組織施設のことをいい、それまでの産業社会が高度化していくことに対応するために積極的に導入されて情報化を進めてきた。
情報の持つ重要性が高くなるという変化は、それまでの物質的な豊かさが重要視されてきた産業社会の変化とは根本的に大きな違いであり、この変化に伴う社会構造・文化構造の変化という社会変動の違いもまた生み出しているのではないだろうか。
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小論1(情報社会論)
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情報化について、マルチメディアやインターネットなどの新たな情報通信技術の発達や普及や高度化、更にはそれらの融合という狭い分野に重点を置いた狭義の情報化を情報社会論という。
情報社会論では、情報化が進むに従い大きな社会変動をも引き起こし、近代の産業による発展を主軸としてきた産業化社会とは違った、新たな情報社会を生み出したことを指摘している。
また、メディア開発・普及を中心にした、情報社会論と関係の深いコミュニケーション論を情報社会モデルとしてとらえるとき、その起点を物理的情報装置の変化におくことができる。
なぜなら、パソコンや携帯電話などの機器を通じて誰もがいつでも情報を受け取ったり発信したりすることができるインターネットなどの情報通信技術の発達や普及という物理的情報装置の変化が、人々のコミュニケーションを時間・空間・社会関係から解き放ち、従来のような送り手と受け手という一方向ではなく双方向型のコミュニケーション形態を生み出したと考えられるからである。
この形態は電子コミュニティの活性化や、個人の情報活動の能動化、情報的自主コミュニティといった、情報ネットワークで結ばれた機能的情報空間を作り出すなど、それまでの、主に一点を頂点として序列がはっきり決まっていることが多く情報や物の流れも一方向であることが多かった産業社会では見られなかった「多中心的・相互補完的」という新しい社会関係を生み出した。
新しい社会関係の普及は、社会構造や文化構造の変化を促し、その変化が支配的になるにつれ大きな社会変動を生じさせて産業社会から情報社会への移行をもたらしたのではないだろうか。
情報社会モデルでは、物理的情報装置の変化に伴う社会変動が対象とされてきたが、近年になってこのモデルでは見過ごされてきた、情報の生産・流通・消費過程の流れであるコミュニケーション過程を、文化の生成や変化としてとらえた、文化としてのコミュニケーション、言い換えれば「政治コミュニケーション排除モデル」という視点をもった「文化=コミュニケーション・モデル」の考え方が登場してきた。
ここでいう「文化」とは、ある社会の構成員たちが共通して持つ価値観や生活様式、更にはそこから生み出されるさまざまな生産物のことを指す。
このモデルでは、言葉、コードなどの文化的情報装置が重視されることに特徴がある。
コミュニケーション過程において、発信した情報を受け取る側が一様の解釈ではなく個人の差異に応じて解読するという文化的情報装置の多様性を認めている。
インターネット上など、公に発信された情報を受け取る際に皆に同じ解釈を強いないということである。
これは社会構造・文化構造の多様性を促す、言い換えれば産業社会とは違った形の文化変容を軸とした社会変動につながっているといえるのではないだろうか。
更に、文化的情報装置のコミュニケーション過程に対する影響やその過程の規定についての視点も重視している。
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小論2(デジタル・ディバイド)
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また、「デジタル・ディバイド」と呼ばれる情報格差の存在も重要な問題である。
情報格差はなぜ発生したのだろうか。情報格差を加速的に広げた大きな要因のひとつはインターネットの出現とその普及にあると考える。
インターネットは、それまで大きな制約であった時間・空間・社会関係をすべて取り払うことを可能とした。
このインターネットは現実社会とは一線を画した一種の仮想社会である。
誰でも容易にアクセスして情報を収集したり、発信したりすることが可能であることから、情報が情報を生み出し、今や手に入れられない情報などほとんどないのでないかとさえ思われる。
また、このボーダレスな環境はグローバル・コミュニケーションの活発化も促しており、ネット上では国境は関係なくなりつつある。
更に、最初は情報の発受信だけであった利用法も、ショッピングや銀行機能といった新しいものを次々と生み出しながら進化を続けている。
インターネットほどではないものの、携帯電話についても同じようなことが言え、最初は通話だけであった機能も財布やテレビ機能が加わるなどマルチメディア化が進みその影響力を増している。
このようにインターネット等の利用者は豊かな文化的情報装置を持っているという意味では「インフォメーション・リッチ」といえる。
しかしながら、一方でこれらを使うにはまずこれらを利用できる物理的情報装置を持つことが必要であり、それにはある程度の物質的・文化的豊かさが必要とされることから、利用者そのものが制限されるという別の制約がでてきている。
またそれ以外にも、世代、性、都市規模、などのさまざまな属性要因も利用に影響している。このことは、手にすることのできる情報が乏しい「インフォメーション・プア」の存在があることを意味している。
情報格差は、国際間から一国内の地域地方まで様々なレベルでそれぞれ存在しているが、全体的に「インフォメーション・リッチ」が「インフォメーション・プア」を支配するという傾向を示している。
例えば、戦争における情報戦や戦争報道などでは、「インフォメーション・リッチ」である先進諸外国が「インフォメーション・プア」である第三世界諸国に対し都合の良いように情報操作をしているという事実がある。
情報格差が問題なのは、それまでの産業社会では産業による物質の豊かさの差異が社会関係における支配関係に結びついていたことが問題とされていたものが、今度は同じことが情報格差によって引き起こされているからである。
これは情報化による社会変動がもたらした新しい社会問題であるのではないだろうか。
この問題の解決には「インフォメーション・プア」に独自の努力を求めるのは難しいと考える。
なぜなら、「インフォメーション・プア」は自身がどのような情報格差を持っているのかということ自体がわかりにくいため、どのようなことをしてその格差を埋めたらよいのかという手段や対策が講じにくいと考えられるからである。
したがって、まずは「インフォメーション・リッチ」が物理的情報装置の発達・普及などの手助けをすることが必要なのではないかと考える。
自らの努力を促すのは、手手助けによってある程度の状態に達した後にすべきであるのではないだろうか。
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4
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小論3(知的財産権)
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また、知的財産権の問題も情報化に伴う社会変動のひとつとして挙げられる。
情報化の進展は、情報そのものを商品や権利として扱うことを促した。産業社会においては、物が最大の価値対象であったことと比べると、情報という実体のないものに大きな価値対象が与えられたということは大きな社会変動であるといえる。
この分野は、注目されるようになったのが比較的近年のため、情報化が進展するに従い知的財産権の定義も変わるなど変化の速度に追いついていないところが見られる。
また、各国で知的財産権の扱いに違いがあるため、国際間で紛争になると何が正しいかということよりも、強く交渉したほうが勝利することがあるなど不安定なところがある。
わが国でも半導体特許など、国際間の紛争を余儀なくされることも増えており、世界レベルでの知的財産権というものの扱いが問われていると思われる。
各国バラバラではなく国際的に統一された制度整備が急務であると考える。
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5
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まとめ
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近年の情報化の発達は情報が情報を生み出して加速度的に進む傾向にある。
例えば、ヒトの遺伝子情報の解読などは、本来であればかなり多くの年数がかかると見込まれていた作業であったが実際には世界的な情報ネットワークの助けによりわずか数年で完了してしまったことは記憶に新しい。
情報化と社会変動は現代社会におけるさまざまな分野の進歩につながることは間違いないが、一方で様々な問題を生み出していることは忘れてはならないことである。
急速な情報化の発達に伴う社会変動に振り回されることなく、世界レベルをも意識して一人ひとりが対応をしていくことが必要であると考える。
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参考文献
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<参考文献>
・吉田純 著「インターネット空間の社会学」世界思想社2000年
・久保正敏 著「マルチメディア時代の起点」日本放送出版協会1996年
・浅間正道 著「情報社会のネオスタンダード」創友社2002年
・江下雅之 著「ネットワーク社会の深層構造」中央公論新社2000年
・船津衛 著「コミュニケーション・入門」有斐閣1996年
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文章のみ(レポートをそのまま文章のみ掲載。ざっと読みたいという方に)
情報化とは、社会の中のさまざまな領域において、情報の持つ重要性が高くなることをいい、その発達が物理的情報装置の変化に置かれていることに特徴がある。ここでいう物理的情報装置とは、コミュニケーション・メディア、交通機関、また、学校や企業などの情報の生産・流通・消費活動が中心の教育組織施設のことをいい、それまでの産業社会が高度化していくことに対応するために積極的に導入されて情報化を進めてきた。
情報の持つ重要性が高くなるという変化は、それまでの物質的な豊かさが重要視されてきた産業社会の変化とは根本的に大きな違いであり、この変化に伴う社会構造・文化構造の変化という社会変動の違いもまた生み出しているのではないだろうか。
情報化について、マルチメディアやインターネットなどの新たな情報通信技術の発達や普及や高度化、更にはそれらの融合という狭い分野に重点を置いた狭義の情報化を情報社会論という。情報社会論では、情報化が進むに従い大きな社会変動をも引き起こし、近代の産業による発展を主軸としてきた産業化社会とは違った、新たな情報社会を生み出したことを指摘している。
また、メディア開発・普及を中心にした、情報社会論と関係の深いコミュニケーション論を情報社会モデルとしてとらえるとき、その起点を物理的情報装置の変化におくことができる。なぜなら、パソコンや携帯電話などの機器を通じて誰もがいつでも情報を受け取ったり発信したりすることができるインターネットなどの情報通信技術の発達や普及という物理的情報装置の変化が、人々のコミュニケーションを時間・空間・社会関係から解き放ち、従来のような送り手と受け手という一方向ではなく双方向型のコミュニケーション形態を生み出したと考えられるからである。この形態は電子コミュニティの活性化や、個人の情報活動の能動化、情報的自主コミュニティといった、情報ネットワークで結ばれた機能的情報空間を作り出すなど、それまでの、主に一点を頂点として序列がはっきり決まっていることが多く情報や物の流れも一方向であることが多かった産業社会では見られなかった「多中心的・相互補完的」という新しい社会関係を生み出した。新しい社会関係の普及は、社会構造や文化構造の変化を促し、その変化が支配的になるにつれ大きな社会変動を生じさせて産業社会から情報社会への移行をもたらしたのではないだろうか。
情報社会モデルでは、物理的情報装置の変化に伴う社会変動が対象とされてきたが、近年になってこのモデルでは見過ごされてきた、情報の生産・流通・消費過程の流れであるコミュニケーション過程を、文化の生成や変化としてとらえた、文化としてのコミュニケーション、言い換えれば「政治コミュニケーション排除モデル」という視点をもった「文化=コミュニケーション・モデル」の考え方が登場してきた。ここでいう「文化」とは、ある社会の構成員たちが共通して持つ価値観や生活様式、更にはそこから生み出されるさまざまな生産物のことを指す。このモデルでは、言葉、コードなどの文化的情報装置が重視されることに特徴がある。コミュニケーション過程において、発信した情報を受け取る側が一様の解釈ではなく個人の差異に応じて解読するという文化的情報装置の多様性を認めている。インターネット上など、公に発信された情報を受け取る際に皆に同じ解釈を強いないということである。これは社会構造・文化構造の多様性を促す、言い換えれば産業社会とは違った形の文化変容を軸とした社会変動につながっているといえるのではないだろうか。更に、文化的情報装置のコミュニケーション過程に対する影響やその過程の規定についての視点も重視している。
また、「デジタル・ディバイド」と呼ばれる情報格差の存在も重要な問題である。情報格差はなぜ発生したのだろうか。情報格差を加速的に広げた大きな要因のひとつはインターネットの出現とその普及にあると考える。インターネットは、それまで大きな制約であった時間・空間・社会関係をすべて取り払うことを可能とした。このインターネットは現実社会とは一線を画した一種の仮想社会である。誰でも容易にアクセスして情報を収集したり、発信したりすることが可能であることから、情報が情報を生み出し、今や手に入れられない情報などほとんどないのでないかとさえ思われる。
また、このボーダレスな環境はグローバル・コミュニケーションの活発化も促しており、ネット上では国境は関係なくなりつつある。更に、最初は情報の発受信だけであった利用法も、ショッピングや銀行機能といった新しいものを次々と生み出しながら進化を続けている。インターネットほどではないものの、携帯電話についても同じようなことが言え、最初は通話だけであった機能も財布やテレビ機能が加わるなどマルチメディア化が進みその影響力を増している。
このようにインターネット等の利用者は豊かな文化的情報装置を持っているという意味では「インフォメーション・リッチ」といえる。しかしながら、一方でこれらを使うにはまずこれらを利用できる物理的情報装置を持つことが必要であり、それにはある程度の物質的・文化的豊かさが必要とされることから、利用者そのものが制限されるという別の制約がでてきている。またそれ以外にも、世代、性、都市規模、などのさまざまな属性要因も利用に影響している。このことは、手にすることのできる情報が乏しい「インフォメーション・プア」の存在があることを意味している。
情報格差は、国際間から一国内の地域地方まで様々なレベルでそれぞれ存在しているが、全体的に「インフォメーション・リッチ」が「インフォメーション・プア」を支配するという傾向を示している。例えば、戦争における情報戦や戦争報道などでは、「インフォメーション・リッチ」である先進諸外国が「インフォメーション・プア」である第三世界諸国に対し都合の良いように情報操作をしているという事実がある。
情報格差が問題なのは、それまでの産業社会では産業による物質の豊かさの差異が社会関係における支配関係に結びついていたことが問題とされていたものが、今度は同じことが情報格差によって引き起こされているからである。これは情報化による社会変動がもたらした新しい社会問題であるのではないだろうか。
この問題の解決には「インフォメーション・プア」に独自の努力を求めるのは難しいと考える。なぜなら、「インフォメーション・プア」は自身がどのような情報格差を持っているのかということ自体がわかりにくいため、どのようなことをしてその格差を埋めたらよいのかという手段や対策が講じにくいと考えられるからである。したがって、まずは「インフォメーション・リッチ」が物理的情報装置の発達・普及などの手助けをすることが必要なのではないかと考える。自らの努力を促すのは、手手助けによってある程度の状態に達した後にすべきであるのではないだろうか。
また、知的財産権の問題も情報化に伴う社会変動のひとつとして挙げられる。情報化の進展は、情報そのものを商品や権利として扱うことを促した。産業社会においては、物が最大の価値対象であったことと比べると、情報という実体のないものに大きな価値対象が与えられたということは大きな社会変動であるといえる。この分野は、注目されるようになったのが比較的近年のため、情報化が進展するに従い知的財産権の定義も変わるなど変化の速度に追いついていないところが見られる。
また、各国で知的財産権の扱いに違いがあるため、国際間で紛争になると何が正しいかということよりも、強く交渉したほうが勝利することがあるなど不安定なところがある。わが国でも半導体特許など、国際間の紛争を余儀なくされることも増えており、世界レベルでの知的財産権というものの扱いが問われていると思われる。各国バラバラではなく国際的に統一された制度整備が急務であると考える。
近年の情報化の発達は情報が情報を生み出して加速度的に進む傾向にある。例えば、ヒトの遺伝子情報の解読などは、本来であればかなり多くの年数がかかると見込まれていた作業であったが実際には世界的な情報ネットワークの助けによりわずか数年で完了してしまったことは記憶に新しい。情報化と社会変動は現代社会におけるさまざまな分野の進歩につながることは間違いないが、一方で様々な問題を生み出していることは忘れてはならないことである。急速な情報化の発達に伴う社会変動に振り回されることなく、世界レベルをも意識して一人ひとりが対応をしていくことが必要であると考える。
<参考文献>
・ 吉田純 著「インターネット空間の社会学」世界思想社2000年
・ 久保正敏 著「マルチメディア時代の起点」日本放送出版協会1996年
・ 浅間正道 著「情報社会のネオスタンダード」創友社2002年
・ 江下雅之 著「ネットワーク社会の深層構造」中央公論新社2000年
・ 船津衛 著「コミュニケーション・入門」有斐閣1996年