■レポート【刑法各論】




本課題は事例問題です。
まず、何の罪を論点としてあげなければならないのかを考えなければなりません。
課題文章は物語調で読みやすく、読むだけならさらさらと読み終わるのですが、さらりと書かれたひとことの中に重要論点となる事項も入っていて、課題として取り組むには一言一句かなり丁寧に読み込む必要がありました。


どんな科目?(本科目について簡単にご紹介)



刑法学は、総論と各論に分かれています。総論は、犯罪と刑罰全体に関する基礎的な理論が中心です。すべての犯罪に共通する理論が扱われます。
 これに対し、各論は、詐欺罪や強盗罪といった個別の犯罪に関する法規の解釈論です。総論の知識を基礎にして、個々の犯罪に関する理論や適用に関することを扱います。

課題情報 (課題の概略や成績など)

1

科目

刑法各論

2

課題概略

事例問題:課題文約570字構成

(要約)許可を得て使用した他人のクレジットカードに関する行為の刑事責任について。

3

課題タイプ

検討せよ

4

提出形式

ワープロ

5

評価

6

レポート構成

1-1-1 甲の罪責α-1問題提起

1-1-2 流れ提示

1-1-3 罪責α-1検討(要件当てはめ)

1-1-4 罪責α-1検討(条件考慮1

1-1-5 罪責α-1検討(条件考慮2)

1-2-1 罪責β問題提起と流れ提示

1-2-2 文言定義

1-2-3 罪責β検討(要件当てはめ)

1-1-6 罪責α-2検討(要件当てはめ)

2      まとめ

3      甲の罪責結論

7      引用文献・参考文献

7

文字数制限

4000

8

本文文字数

3309

9

備考

・使用許諾について検討不足等のご指摘いただいています。

・難しくてとても悩んだ記憶があります。書店で司法試験の過去問や参考書を見て、似た問題がないか探しました。


分析(文章をまとまりごとに表形式で整理)



1-1-1
甲の罪責α-1問題提起
甲の刑事責任について、まず、甲の自己のクレジットカードの使用につき、消費者金融及びクレジット会社からの借金がかさんでその返済の見通しがたたなくなり、支払意思・能力共になくなったといえる状態に陥ったにもかかわらず、更に買い物をし続けていたことにつき詐欺罪(246)の成立が考えられる。

また、自己名義ではない交際相手乙のクレジットカードを使用して買い物を行なった事実についても、自己名義のカード使用ではなく甲自身による支払意思はないことから、同様に詐欺罪の成立が考えられる。

ここでいう詐欺罪とは、「人を欺いて財物を交付させ、または財産上の不法の利益を得、もしくは他人に得させる行為、および、これに準ずる行為を内容とする犯罪」(1)を指す。詐欺罪の成立には、1つ目として相手方を欺くこと(欺罔行為)、2つ目に相手方に錯誤を生じさせること、3つ目にこの錯誤に基づく財産的処分行為があること、4つ目に財物又は財産上の利益が移転すること、5つ目に財産上の損害が生じたこと、を要件とし、更にこれら一連の事実の「相互の因果関係が重要」(2)とされる。

1-1-2
流れ提示
以上を踏まえ、本件における詐欺罪の要件事実の有無を以下に検討したい。

1-1-3
罪責α-1検討(要件当てはめ)
甲は買い物に際し、自己及び乙のクレジットカードを使用している。

クレジットカード取引においては、その名義にかかわらず有効なカードにより取引する以上、加盟店は手続きを行なうことによって後に信販会社から立替金を受けることができる。

従って、甲の支払意思・能力については、加盟店は考慮する必要はないといえるため、1つ目、2つ目の要件である欺罔行為と錯誤はないといえないだろうか。

しかし、「もし加盟店が利用客に代金支払いの意思および能力の無いことを知っていれば、クレジットカードによる取引を拒絶すべきことは信義則上当然」(注3)であり、加盟店は甲の欺罔行為により生じた錯誤から取引に応じた被欺罔者であるといえることから、1つ目、2つ目の要件は満たすと考えられる。

また加盟店は、錯誤により、所有権のあった財産である商品を甲に引き渡すことにより利益を移転させた処分行為者でもあることから、3つ目と4つ目の要件についても満たしていると考える。

では、5つ目の要件である財産上の損害については、クレジットカードの信販会社と加盟店のどちらに発生したといえるのだろうか。

これにより、本件が246条の、財物を客体とする財物詐欺罪であるⅠ項詐欺罪か、その他の財産上の利益を客体とする利益詐欺罪(利得詐欺罪)であるⅡ項詐欺罪のいずれに該当するかが異なるため、検討が必要である。

加盟店は、後に信販会社から商品代金の立替払を受けられることから、損害がないかに見える。

この点について、支払意思・能力のない者が加盟店でクレジットカードを使用した際には、「現実に金銭を取得するのは加盟店であってカード使用者ではなく、しかも立替払いは決済銀行における口座振替の形で行なわれるのであるからⅠ項詐欺ではなくⅡ項詐欺が成立する」という見解(4)もある。

しかし、詐欺罪は個別財産に対する罪であるため、欺罔行為がなければ財物を引き渡すことはなかったという因果関係が成立すれば、商品の交付自体が財産上の損害であると考えられⅠ項詐欺罪が該当すると解する。

本件においても、加盟店が甲の利用したクレジットカードにつき事情を知って売買に応じなければ、立替払いが受けられないおそれは十分あるといえ、加盟店が商品を失った点につき財産的損害を認めることができる。

従って、被害者は加盟店であり、商品を交付した時点で詐欺罪は既遂となると解する。更に、これまで述べてきた内容を考慮するとこれら一連の事実については相互の因果関係が存在するといえる。

また、他人名義のカードの不正使用について、判例でも加盟店に対する刑法246条Ⅰ項詐欺罪を肯定している(東京高判平成31216日判タ787272)

1-1-4
罪責α-1検討(条件考慮1
ところで、このクレジットカードの使用については交際相手乙が甲に対して一月に10万円の使用を許可していたという事情がある。

甲は最初この範囲内で買い物をしていたがのちにこの金額を超えた買い物を行なっている。

では、最初の許可範囲内での使用については、乙の同意を得ていたといえるため犯罪とならないのではないだろうか。

この点について判例は、カードの名義人から使用許可されており、なおかつ、自らの使用に係るそのカードの利用代金が会員規約に従って名義人において決済されるものと誤信していたという事情があっても詐欺罪は成立するとしている(最決平成1629日刑集58289)

従って、本件についても詐欺罪の成立についてクレジットカード名義人の使用許可の有無は影響しないと解する。

1-1-5
罪責α-1検討(条件考慮2)
また、甲と乙が交際関係にあったことについての考慮は必要だろうか。

詐欺の罪には親族間の犯罪に関する特例(244)規定があり、「例えば、親のクレジットカードを、親の承諾を得て親の名をかたって使用しても、詐欺罪で処罰すべきでない」(5)であるとされる等、損害の存在を否定するような事情がある場合には犯罪を構成しないとしている。

本件では、交際が244条Ⅱ項の「前項に規定する親族以外の親族」といえるかが問題である。

この点については、交際のみでは法律上の関係性が生じているとはいえないため、考慮は必要ないと考える。

以上より、甲は詐欺罪(246条Ⅰ項)の罪責を負うと解する。

1-2-1
罪責β問題提起と流れ提示
次に、甲が買い物の際にクレジットカード売上票用紙の「ご署名」欄に「乙」とボールペンで記入して加盟店に提出した点につき、私文書偽造罪(159条)及び偽造文書行使罪(161条)が該当すると考えられるため、以下に検討する。

1-2-2
文言定義
私文書偽造罪は私文書の有形偽造の処罰を対象としており、客体は、他人の権利、義務又は事実証明に関する文書若しくは図画である。

ここでいう権利義務に関する文書とは、「権利義務の発生、変更、消滅の要件になる文書及び、権利義務の存在を証明するもの」(注6)のことをいう。

1-2-3
罪責β検討(要件当てはめ)
本件において、甲が加盟店で乙名を記入したクレジットカードの売上票用紙は、主体が私人であることから私文書であり、またその署名により金銭支払いに関する権利義務が生じるという性質を持つことから、権利義務に関する文書であると解する。

従って、甲には私文書偽造罪が成立する。また、他人の名前で署名した用紙を加盟店へ提出したことは偽造文書の行使にあたるのではないか。

偽造私文書行使罪の客体は、偽造・変造された権利・義務又は事実証明に関する私文書(図画)が該当し、それを真正の文書として使用することである。

真正の文書として使用とは「本来の用法に従って使用する場合に限らず、何らかの意味で真正の文書としてその効用に役立たせる目的のもとに使用すれば足りる」(7)ことから、本件においても甲は偽造私文書を真正の文書として加盟店に提出するという行為から、偽造文書行使罪も該当すると解する。

1-1-6
罪責α-2検討(要件当てはめ)
ところで、甲は乙のクレジットカードを利用して自動キャッシング機から50万円のキャッシングを行ない、その現金を自己のために使用しているがこの行為については、詐欺罪を構成するといえるだろうか。

機械から現金を引き出す行為は、人を欺くものではないから、詐欺罪の1つ目の要件である相手方を欺くこと(欺罔行為)、及び2つ目の要件である相手方に錯誤を生じさせることについては該当しないと考えられる。

この行為については、他人の財物を窃取した事実から、「詐欺罪ではなく窃盗罪にあたる」(8)と解する。

2
まとめ
ここまで甲の罪責について検討してきたように、甲には複数の罪が該当すると考えられるが、罪数はどのようになるのだろうか。

私文書偽造罪及び偽造文書行使罪については牽連犯の関係にあるが、詐欺罪とも牽連犯(54)の関係にあるため、これらは全体として一つの牽連犯になり、更に窃盗罪については詐欺罪との併合罪(45)となる(9)と解する。

3
甲の罪責結論
以上から、甲は私文書偽造罪、偽造文書行使罪、詐欺罪、窃盗罪の罪責を負う。

これらは、私文書偽造罪、偽造文書行使罪、詐欺罪が牽連犯(54)、更に詐欺罪と窃盗罪が併合罪の関係に立つ。

7
引用文献・参考文献

<引用文献>
(1)大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005P238.l9-10
(2)前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P264.3
(
3)大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005P250.l16-17
(4)曽根威彦 著「刑法の重要問題〔各論〕第2版」成文堂2006P202.l16-18を要約
(5)前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P289.34-35
(
6) 前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P465.6-7
(7) 前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P463.7-9
(
8) 大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005P245 l.1
(9) 前田雅英 著「刑法総論講義 第3版」東京大学出版会1998P480.1-5を参考


<参考文献>
・大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005
  前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007
  曽根威彦 著「刑法の重要問題〔各論〕第2版」成文堂2006
  前田雅英 著「刑法総論講義 第3版」東京大学出版会1998
・菅野和夫 他編「ポケット六法 平成19年版」有斐閣2006




文章のみ (レポートをそのまま文章のみ掲載。ざっと読みたいという方に)


甲の刑事責任について、まず、甲の自己のクレジットカードの使用につき、消費者金融及びクレジット会社からの借金がかさんでその返済の見通しがたたなくなり、支払意思・能力共になくなったといえる状態に陥ったにもかかわらず、更に買い物をし続けていたことにつき詐欺罪(246)の成立が考えられる。また、自己名義ではない交際相手乙のクレジットカードを使用して買い物を行なった事実についても、自己名義のカード使用ではなく甲自身による支払意思はないことから、同様に詐欺罪の成立が考えられる。

ここでいう詐欺罪とは、「人を欺いて財物を交付させ、または財産上の不法の利益を得、もしくは他人に得させる行為、および、これに準ずる行為を内容とする犯罪」(1)を指す。詐欺罪の成立には、1つ目として相手方を欺くこと(欺罔行為)、2つ目に相手方に錯誤を生じさせること、3つ目にこの錯誤に基づく財産的処分行為があること、4つ目に財物又は財産上の利益が移転すること、5つ目に財産上の損害が生じたこと、を要件とし、更にこれら一連の事実の「相互の因果関係が重要」(2)とされる。以上を踏まえ、本件における詐欺罪の要件事実の有無を以下に検討したい。

甲は買い物に際し、自己及び乙のクレジットカードを使用している。クレジットカード取引においては、その名義にかかわらず有効なカードにより取引する以上、加盟店は手続きを行なうことによって後に信販会社から立替金を受けることができる。従って、甲の支払意思・能力については、加盟店は考慮する必要はないといえるため、1つ目、2つ目の要件である欺罔行為と錯誤はないといえないだろうか。しかし、「もし加盟店が利用客に代金支払いの意思および能力の無いことを知っていれば、クレジット・カードによる取引を拒絶すべきことは信義則上当然」(注3)であり、加盟店は甲の欺罔行為により生じた錯誤から取引に応じた被欺罔者であるといえることから、1つ目、2つ目の要件は満たすと考えられる。
また加盟店は、錯誤により、所有権のあった財産である商品を甲に引き渡すことにより利益を移転させた処分行為者でもあることから、3つ目と4つ目の要件についても満たしていると考える。
では、5つ目の要件である財産上の損害については、クレジットカードの信販会社と加盟店のどちらに発生したといえるのだろうか。これにより、本件が246条の、財物を客体とする財物詐欺罪であるⅠ項詐欺罪か、その他の財産上の利益を客体とする利益詐欺罪(利得詐欺罪)であるⅡ項詐欺罪のいずれに該当するかが異なるため、検討が必要である。加盟店は、後に信販会社から商品代金の立替払を受けられることから、損害がないかに見える。  この点について、支払意思・能力のない者が加盟店でクレジットカードを使用した際には、「現実に金銭を取得するのは加盟店であってカード使用者ではなく、しかも立替払いは決済銀行における口座振替の形で行なわれるのであるからⅠ項詐欺ではなくⅡ項詐欺が成立する」という見解(4)もある。しかし、詐欺罪は個別財産に対する罪であるため、欺罔行為がなければ財物を引き渡すことはなかったという因果関係が成立すれば、商品の交付自体が財産上の損害であると考えられⅠ項詐欺罪が該当すると解する。本件においても、加盟店が甲の利用したクレジットカードにつき事情を知って売買に応じなければ、立替払いが受けられないおそれは十分あるといえ、加盟店が商品を失った点につき財産的損害を認めることができる。従って、被害者は加盟店であり、商品を交付した時点で詐欺罪は既遂となると解する。更に、これまで述べてきた内容を考慮するとこれら一連の事実については相互の因果関係が存在するといえる。また、他人名義のカードの不正使用について、判例でも加盟店に対する刑法246条Ⅰ項詐欺罪を肯定している(東京高判平成31216日判タ787272)

ところで、このクレジットカードの使用については交際相手乙が甲に対して一月に10万円の使用を許可していたという事情がある。甲は最初この範囲内で買い物をしていたがのちにこの金額を超えた買い物を行なっている。では、最初の許可範囲内での使用については、乙の同意を得ていたといえるため犯罪とならないのではないだろうか。この点について判例は、カードの名義人から使用許可されており、なおかつ、自らの使用に係るそのカードの利用代金が会員規約に従って名義人において決済されるものと誤信していたという事情があっても詐欺罪は成立するとしている(最決平成1629日刑集58289)。従って、本件についても詐欺罪の成立についてクレジットカード名義人の使用許可の有無は影響しないと解する。

また、甲と乙が交際関係にあったことについての考慮は必要だろうか。詐欺の罪には親族間の犯罪に関する特例(244)規定があり、「例えば、親のクレジットカードを、親の承諾を得て親の名をかたって使用しても、詐欺罪で処罰すべきでない」(5)であるとされる等、損害の存在を否定するような事情がある場合には犯罪を構成しないとしている。本件では、交際が244条Ⅱ項の「前項に規定する親族以外の親族」といえるかが問題である。この点については、交際のみでは法律上の関係性が生じているとはいえないため、考慮は必要ないと考える。

以上より、甲は詐欺罪(246条Ⅰ項)の罪責を負うと解する。
次に、甲が買い物の際にクレジットカード売上票用紙の「ご署名」欄に「乙」とボールペンで記入して加盟店に提出した点につき、私文書偽造罪(159条)及び偽造文書行使罪(161条)が該当すると考えられるため、以下に検討する。

私文書偽造罪は私文書の有形偽造の処罰を対象としており、客体は、他人の権利、義務又は事実証明に関する文書若しくは図画である。ここでいう権利義務に関する文書とは、「権利義務の発生、変更、消滅の要件になる文書及び、権利義務の存在を証明するもの」(注6)のことをいう。本件において、甲が加盟店で乙名を記入したクレジットカードの売上票用紙は、主体が私人であることから私文書であり、またその署名により金銭支払いに関する権利義務が生じるという性質を持つことから、権利義務に関する文書であると解する。従って、甲には私文書偽造罪が成立する。また、他人の名前で署名した用紙を加盟店へ提出したことは偽造文書の行使にあたるのではないか。偽造私文書行使罪の客体は、偽造・変造された権利・義務又は事実証明に関する私文書(図画)が該当し、それを真正の文書として使用することである。真正の文書として使用とは「本来の用法に従って使用する場合に限らず、何らかの意味で真正の文書としてその効用に役立たせる目的のもとに使用すれば足りる」(7)ことから、本件においても甲は偽造私文書を真正の文書として加盟店に提出するという行為から、偽造文書行使罪も該当すると解する。

ところで、甲は乙のクレジットカードを利用して自動キャッシング機から50万円のキャッシングを行ない、その現金を自己のために使用しているがこの行為については、詐欺罪を構成するといえるだろうか。機械から現金を引き出す行為は、人を欺くものではないから、詐欺罪の1つ目の要件である相手方を欺くこと(欺罔行為)、及び2つ目の要件である相手方に錯誤を生じさせることについては該当しないと考えられる。この行為については、他人の財物を窃取した事実から、「詐欺罪ではなく窃盗罪にあたる」(8)と解する。

ここまで甲の罪責について検討してきたように、甲には複数の罪が該当すると考えられるが、罪数はどのようになるのだろうか。私文書偽造罪及び偽造文書行使罪については牽連犯の関係にあるが、詐欺罪とも牽連犯(54)の関係にあるため、これらは全体として一つの牽連犯になり、更に窃盗罪については詐欺罪との併合罪(45)となる(9)と解する。

 以上から、甲は私文書偽造罪、偽造文書行使罪、詐欺罪、窃盗罪の罪責を負う。これらは、私文書偽造罪、偽造文書行使罪、詐欺罪が牽連犯(54)、更に詐欺罪と窃盗罪が併合罪の関係に立つ。




<引用文献>
(1)大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005P238.l9-10
(2)前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P264.3
(
3)大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005P250.l16-17
(4)曽根威彦 著「刑法の重要問題〔各論〕第2版」成文堂2006P202.l16-18を要約
(5)前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P289.34-35
(
6) 前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P465.6-7
(7) 前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007P463.7-9
(
8) 大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005P245 l.1
(9) 前田雅英 著「刑法総論講義 第3版」東京大学出版会1998P480.1-5を参考

<参考文献>
・大塚仁 著「刑法概説(各論) 第3版増補版」有斐閣2005
  前田雅英 著「刑法各論講義 第4版」東京大学出版会2007
  曽根威彦 著「刑法の重要問題〔各論〕第2版」成文堂2006
  前田雅英 著「刑法総論講義 第3版」東京大学出版会1998
・菅野和夫 他編「ポケット六法 平成19年版」有斐閣2006